このページではブログスタイルで山登りのコースガイドを紹介します。

 

 

 

鳳凰三山ガイタル

2013年7月20日~21日

 

 

鳳凰三山は南アルプスの入門コースと言われています。

特に今回紹介する青木鉱泉を基点に周回するコースは、マイカーでのアクセスが容易であること、山小屋利用の1泊2日行程としては、申し分のないペース配分であることから、ひじょうに人気の高いコースです。

もちろん、富士山や八ヶ岳をはじめ、白峰三山、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳など南アルプスの主要な山体を間近に望めるその眺望の良さも魅力ですし、地蔵岳のオベリスクの岩塔も強烈な印象を残してくれます。

 

紹介するコースは

 

1日目:青木鉱泉~中道~薬師岳~薬師岳小屋(泊)

2日目:薬師岳小屋~観音岳~アカヌケ沢の頭(地蔵岳)~ドンドコ沢~青木鉱泉

 

という青木鉱泉を基点にして、時計周りに周回するコースです。

反対周りでももちろんO.K.なのですが、五色の滝、南精進の滝などが連続するドンドコ沢はこのコースの見どころの一つ。

1日目の登りに持ってくるか、2日目の下りに持ってくるか・・・というのは選択の基準にもなるでしょう。

私個人的には下山時の滝に、山たびの疲れを十分に癒されたということを付け加えておきますね。

反時計回りの場合、鳳凰小屋に宿泊し、翌日早朝発ちで地蔵岳山頂でのご来光というパターンがオススメ。

時計周りで周回する場合でも、1日目で鳳凰小屋まで下ってしまえば、2日目の行程はかなり楽になります。

私は薬師か観音岳の山頂でのんびりと日の出を拝みたかったので、薬師岳小屋泊にしました。

 

 

今回はあざさん、近ちゃんという私の山仲間と3人パーティでの山行でした。

前日の夜中に東京を出発、韮崎の青木鉱泉に向かいました。

途中の林道で、何度か野生の鹿を目撃。

あまり人や車を恐れる様子もなく、悠然と車道で佇む強者もいたり・・・ちょっと驚きましたね。

午前3時過ぎには青木鉱泉に到着、朝までここの駐車場で車中泊をしました。

 

●青木鉱泉(写真とデータは青木鉱泉公式サイトより)

カラマツや広葉樹に囲まれた、静かな山の鉱泉宿

・宿泊  1泊2食 10,000円

・素泊まり  6,500円

・入浴のみ  1,000円

・キャンプ場 (テント50張り可能/水場・水洗トイレ完備) 1人1泊 650円

・駐車料金  1日 750円

 

20日は朝から好天に恵まれ、早くも気持ちが昂ります。

青木鉱泉の水場でしっかりと飲料水を確保して、午前6時30分に出発。

宿の庭先から右に下山時に使うドンドコ沢コースを分け、左の中道コースへ進みます。

歩き始めてすぐに小武川を石伝いに渡渉、その先から林道歩きになるのですが、アイドリングには最適な緩やかな道がしばらく続きます。

7時20分、標識の立った登山口に到着。

ここからようやく本格的な山登りらしくなり、まずはカラマツ林の急斜面をジグザグに登っていきます。

途中御座石と呼ばれる巨岩のある個所まで、目立ったポイントもなく、鬱蒼とした樹林帯をひたすら登っていきます。

シャクナゲの群生地が現れると、ほどなく樹木の合間から富士山が顔を覗かせます。

展望のきかない登りが続いていただけに、ホッとする瞬間です。

 

 

なおも樹林帯を登っていくと、やがて展望の開けた岩場があります。

南に富士山、北に八ヶ岳を望め、眼下に甲府盆地を見下ろす好展望地で、休憩と撮影には最適です。

薬師岳の山頂もだいぶ近づきいてきたのが確認出来ます。

 

 

この先ハイマツ帯を抜け稜線に出ると、白砂と花崗岩が目立つようになってきます。

甲斐駒も森林限界を超えると同じような砂礫の斜面が続きますが、踏ん張りが利かないのでなかなかシンドイ歩行になります。

ひと踏ん張りしてようやく薬師岳山頂へ到着。時計は12時15分。途中休憩等に要した時間はトータルで30分ほど。

山頂からの眺めは抜群!疲れも一気に吹き飛びます。

富士山はもちろん、西方正面にバットレスの大岩壁を携えた北岳の雄姿と、それに連なる間ノ岳、農鳥岳の白峰三山。

北東に金峰山、瑞牆山といった奥秩父の秀峰。

北方にこれから登る観音岳が一際大きく拡がります。

北西方向にパーンすると、「南アルプスの女王」の異名を持つ仙丈ヶ岳の容姿端麗な姿が感動的です。

 

 

山頂での眺望をひとしきり堪能、昼食をとり、14時5分に出発。

この日の宿となる薬師岳小屋は、5分ほど下った砂払岳との暗部にあります。

さすがに夏山シーズンの週末とあって大いに賑わっていました。

夕食のおでんは微妙な感じでしたが(笑)、概ね快適に過ごせました。

 

・薬師岳小屋(データは薬師岳小屋公式サイトより)

・宿泊  1泊2食 8,000円  1泊1食 7,000円

・素泊まり  寝具付き 5,000円  寝具なし(シュラフ持参) 4,000円

・弁当  1,000円

 

2日目は山頂でご来光を拝むべく、早朝4時前に起床し小屋を発ちました。

予想していた以上に雲が多く、薄ぼんやりと夜が明けていく中を薬師岳山頂から稜線伝いに観音岳方面へ。

遮るもののない豪快な展望を満喫しながらの稜線漫歩に、心は躍り、足も弾みます。

30分ほどで観音岳山頂に到着。

残念ながら日の出は拝めず、東方から空が次第に明るみをおび、いつの間にか夜が明けていた感じでした。

鳳凰三山の最高峰になる観音岳山頂からの眺めは、薬師岳のそれにも増して見事な眺め。

薬師からは見えなかった甲斐駒が、地蔵岳のオベリスクを従えて威厳のある姿を見せ、北方には八ヶ岳が大きく裾野を広げています。

来た道を振り返ると、薬師の山頂越しに雲海から顔を覗かせる富士山の姿が。

モルゲンロートに照らされる白峰三山、仙丈ヶ岳の姿もしっかりと目に焼き付けます。

 

 

朝食に薬師岳小屋で買ったパンを食べて、5時20分に観音岳山頂を出発。

アップダウンが続く稜線歩きですが、甲斐駒や地蔵岳のオベリスクを眼前に望みながらの気持ちの良いコースです。

そのオベリスクが徐々に大きく見えてくるようになり、6時20分に地蔵岳山頂直下のアカヌケ沢の頭に到着。

ここから見上げるオベリスクの岩塔は一段と迫力を感じます。

オベリスクは登攀可能なのですが、やはり突端までは登攀具がないと無理なようです。

途中まで足場に気をつけながら、三点確保の要領でよじ登ってみました。

甲斐駒が一際大きく、威風堂々といった姿で迫ります。

こういった岩稜は下りの方が神経を使います。

鞍部の岩陰にザックをデポして、身軽な状態でよじ登るのが良いでしょう。

アカヌケ沢の頭から少し下った開けた砂地が賽の河原と呼ばれている所。

子宝祈願の地蔵が所狭しと並んでおり、あらためて信仰の山であることを印象付けてくれます。

なぜ地蔵岳が子宝祈願の対象とされていたのか・・・

オベリスクの岩塔がなんとなく男性のシンボルに見えなくもないので、その辺りに由来するものなのか・・・

と、ちょっと不埒な想像をしてしまいました。

 

 

 

6時55分、オベリスクに別れを告げ、鳳凰小屋方面に向かって下り始めます。

砂礫の急斜面は富士山の砂走りを思わせ、フカフカしたクッションのような踏み心地は足への負担を軽減してくれます。

再び樹林帯に入りどんどん下って行くと、山間のオアシスを思わせる佇まいの鳳凰小屋に到着。7時30分でした。

いかにも「山のオヤジ」といった風貌の小屋の主人と、てきぱきと働く明るく感じの良い女性スタッフたち。

そして、豊かな水と色とりどりの花に囲まれた周辺環境にも癒され、つい長居してしまいました。

 

 

・鳳凰小屋 (データは 鳳凰小屋公式サイト より)

 

 

7時55分に鳳凰小屋を出発、左に燕頭山方面への道を分け、右に青木鉱泉へ進路を取ります。

小屋前の流れに寄り添いながらドンドコ沢を下っていくコースです。

しばらく樹林帯の中を歩きますが、沢音が常に聞こえてくるので、清涼感につつまれながら気持ち良く歩けます。

ところで、この「ドンドコ沢」という面白い地名の由来は、地蔵岳の子宝祈願に関係があるそうです。

昔、子宝に恵まれない女性は地蔵岳の賽の河原にやってきて、願をかけて地蔵を1体借りていきました。

無事に子宝を授かったあかつきには、借りていた1体と新たにもう1体の地蔵を抱え、お礼太鼓を叩きながらこの沢を登って行ったそうです。

その時の太鼓の音から、この沢が「ドンドコ沢」と呼ばれるようになったとか。

そんな古の人たちに思いを馳せながら下っていくと、沢音が一段と大きくなり、やがて五色の滝が現れます。(8時25分着)

滝壺のすぐ近くまで道が続いているので、さっそく下りていきました。

落差は50mほどあるでしょうか・・・滝壺から見上げるとなかなかの迫力です。

幾筋かの虹を作りながら、岩壁を飛沫をたてて流れ落ちるさまは爽快そのもの。

マイナスイオンをたっぷり浴びて、疲れも吹き飛んでいきました。

 

 

この先さらに、白糸の滝、鳳凰の滝、南精進の滝とそれぞれに趣の異なる滝がいくつも現れ、心をなごませてくれます。

新緑や紅葉の頃はさぞかし美しい光景だろうと思います。

最初の五色の滝から最後の南精進の滝まで、寄り道しつつ歩いて2時間ほどかかりました。

南精進の滝から先は何回か沢を渡渉しながら、どんどん高度を下げていきます。

単調な下りに少々飽きてきた頃、ダムの護岸工事をしている個所に出ました。

ほんの少しだけ回り道をしますが、それでもほどなく青木鉱泉の宿舎が見えてきました。

到着時間は11時40分。南精進の滝を出発してから、1時間20分ほどかかりました。

もちろん、ゆっくりと青木鉱泉の湯に浸かって疲れを癒してきました。